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名古屋地方裁判所 昭和62年(わ)554号 判決

本籍

名古屋市中川区富田町大字戸田字南松前一番地の六四

住居

右同

書道教授

服部茂

昭和九年六月二三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官當山孝保出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役二年及び罰金四五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金九万円を一日に換算した期間労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、名古屋市中川区富田町大字戸田字南松前一番地の六四に居住し、同所等において書道塾を経営するかたわら、継続して有価証券の売買をすることにより所得を得ていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際しては、株式売買により得た所得の全てを秘匿した上

第一  昭和五八年分の実際の所得金額が七二八二万八三〇二円であり、これに対する所得税額が三、九一一万六、一〇〇円であるのに、同五九年三月一四日、名古屋市中川区尾頭橋一丁目七番一九号所在の中川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二二〇万四、三二五円であり、これに対する所得税額が七万八〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額三、九〇四万五、三〇〇円を免れ

第二  同五九年分の実際の所得金額が一億三、二一三万二、一〇六円であり、これに対する所得税額が七、八七四万五、八〇〇円であるのに、同六〇年三月一四日、前記中川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二四九万四、五〇〇円であり、これに対する所得税額が一〇万五〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額七、八六四万五、三〇〇円を免れ

第三  同六〇年分の実際の所得金額が一億三、四一一万七、三二九円であり、これに対する所得税額が七、九七九万七、八〇〇円であるのに、同六一年三月一三日、前記中川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二四七万二、〇〇〇円であり、これに対する所得税額が九万九〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額七、九七〇万六、九〇〇円を免れ

もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書九通

一  被告人作成の上申書

一  三浦一男、小林勝次郎、鈴木卓、太田堅造及び加納直彦の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書六通

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(検甲第五号証)及び脱税額計算書(同第一一号証)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(検甲第六号証)及び脱税額計算書(同第一二号証)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(検甲第七号証)及び脱税額計算書(同第一三号証)

(法令の適用)

被告人の判示所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、各罪についてそれぞれ情状により所定刑中懲役刑と罰金刑を併科し、罰金刑については同条二項によりそれぞれ免れた所得税の額に相当する金額以下とすることとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役二年及び罰金四、五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金九万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 杉山修)

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